【松本・歴史散歩🚶】城下町を守る「閻魔様」を探せ👹東西南北・十王堂めぐり

松本市といえば、やはり国宝松本城がシンボルの城下町ですよね。 でも、実は街のあちこちに「城下町の名残」が今も息づいているのをご存知ですか?

全国の城下町にも十王堂(じゅうおうどう)は残っていますが、松本のように東西南北の四方にその痕跡がはっきりと見られる例は珍しいものです。
かつての町の境界線を守っていた不思議な場所を巡りながら、歴史の息吹を感じる。 今回は、
そんな松本の奥深い魅力を再発見できる、ゆったりお散歩コースをご提案します。

*2026年5月時点の情報です。

松本城下、四方の入り口にはかつて「十王堂」が建てられていました。
なぜ四方なのか?
これらは単なるお堂ではなく、いわば城下町を死守するセキュリティゲートのような存在です。

当時の境界線には物理的な関所である「木戸」が設けられていましたが、そこに閻魔様などの十王を祀ったのには理由があります。
「ここから先へ、邪悪なものは一歩も入れない」
——そんな厳しい審判の力を借りて、見えない脅威から松本の町を二重に守ろうとしたのではないでしょうか。

見えない脅威から松本を守る 死後の冥界を支配する10人の王

仏教の教え(十王信仰)では、人が亡くなると冥界へ行き、そこで10人の王様(十王)による裁判を受けるといわれています 。
よく人が亡くなってから行われる初七日、四十九日、百か日、一周忌、三周忌等の法要は、現世にいる人が死者を追善供養するために行われます。
法要の意味としては、十王がそれぞれの日にちごとに死者の生前の行いを裁断されるので、その罪を軽減させてもらうための追善供養となるわけです。

中でも有名なのが閻魔大王で、5番目に登場する裁判官なんですね。

十王の審判って、めちゃめちゃ厳しいの…?

十王を調べているうちに気がつきましたが、審判はお金でなんとかなることか多いということでした。
法要や葬儀の際に、亡くなった方に金品を持たせる、あるいは供える行為には、主に「道中の通行料」と「審判を有利にするための功徳(くどく)」という2つの意味があります。「道中の通行料」とか「審判を有利にするための功徳(くどく)」を持たせるのはそのためだったみたいです。
三途の川の通行料とされる『六文銭』、それぞれの法要の時に使うお供物やお布施は、死者の審判を少しでも軽くするための心遣いだったんですね。

東西南北から松本の町を守るために建てられた十王堂。
そこに祀られた十王たちは、町への侵入を防ぐセキュリティゲートであると同時に、人々の切実な願いを受け止める「祈りの拠り所」でもあると言われています。
今はひっそりとした名残の中に眠る、昔の人々の祈り。当時の姿にゆっくりと思いを馳せながら、ぜひ散策を楽しんでみてください。

松本にある十王堂を巡るお散歩コースは、松本駅から出発して西→北→東→南へと周るコースです。
徒歩で巡ると約2時間ほど。道中のカフェや食事を入れると4、5時間くらいのコースになりそうです。

また、自転車(レンタサイクル)で巡ると1時間くらいを見ておくと良いでしょう。
松本は、美味しいグルメスポットやパン屋さんなど、地元での有名店もあるので、隠れた名店に立ち寄れるチャンスもありますよ!

分銅町公民館の脇にひっそりと佇む地蔵尊

実は、お地蔵様と閻魔様、同じ存在だという話、知っていますか?
お地蔵様は地蔵菩薩のことであり、閻魔様の本当の姿は実は地蔵菩薩という考え方もあるようです。
日本の仏教思想にあたる『本地垂迹(ほんじすいじゃく)』という感が方が関係しているようで、「仏や菩薩が、人々を救うために別の姿で現れる」というものです。*

ここは松本駅近く、西の入り口にあたる伊勢町(いせまち)です。
賑やかなショップが並ぶエリアのすぐ近く、分銅町公民館(中央1丁目)の脇に、ひっそりと存在しています。

不思議なのは、江戸時代の古い絵図(享保13年)を見ると、東西南北の入り口の中で、ここだけが「十王堂」ではなく「地蔵堂」と記されているんですよ。

*wikipediaより

伊勢町の地蔵堂

住所: 長野県松本市中央1丁目27−3

アクセス: JR松本駅から徒歩 約5分

駐車場:なし

お堂のそばにある石造の地蔵尊をよく見てみると、「元禄15年」の文字が刻まれていました。
元禄といえば、あの赤穂浪士の討ち入りがあった年で、そんな激動の時代から300年以上もの間、この場所で松本の移り変わりを見つめてきたと思うと、なんだか背筋が伸びるような、神聖な気持ちになりますね。

このあたりは松本が誇る「レトロ建築」の宝庫なんです。
駅前だけでも雰囲気を感じさせる建物が多く並んでいますが、古い建物をリノベーションしたハイセンスなお店たちに注目すると違う視点で松本が見えてくるようです。
それぞれの時代を大切に受け継いできた松本ならではの、ノスタルジックな街歩きを楽しんでくださいね。

minä perhonenMatsumoto

住所:長野県松本市大手2-4-26
皆川明氏のブランドショップ

手塚屋仏壇店

住所:長野県松本市大手2-2-2
火灯窓が素敵な仏具屋さん

小麦そば 池

住所:長野県松本市中央1-25-1
麺にもこだわりのある塩ラーメン

レストラン どんぐり

住所:長野県松本市中央1-4-5
ボリューミーな洋食屋

北の最前線!安原町に置かれた「動かない」守護神

続いてご紹介させていただくのは、松本城下の北の入り口、安原町(やすはらまち)です。
地蔵堂からは徒歩で約30分。町の中心をぐんぐんと北へ向かって歩いて行きます。
なわて通り商店街を抜け四柱神社や松本城を見ながら進むと、時間が足りなくなるので、まずは安原十王堂跡まで歩いてしまいましょう。
お城の北側にも、城下町の名残りや、明治・大正・昭和の建築物が当たり前のように見られます。

安原町十王堂跡

住所: 長野県松本市北深志2丁目4−17

アクセス: JR松本駅から車で約9分 最寄りバス停『萩町』から徒歩5分

駐車場:なし

閑静な住宅街が広がる北深志2丁目付近ですが、江戸時代初期にはここが城下町の「北端」でした。
現在は建物がなく、平成2年に立てられた標柱があるのみです 。
江戸中期の絵図によると、この十王堂の敷地は、間口(横幅)が約20メートル、奥行きは約38メートルもあったと記録されています。
隣り合う一般的な町家が幅5〜6メートルほどだったことを考えると、なんとその4倍近い広さ!
いかに大きな存在感を持って、北の門番として君臨していたかが分かります。

放光庵の境内には、寛文9年(1669年)に作られた高さ110cmもある立派な石造の「延命地蔵」もいらっしゃいます 。
さらに、延宝8年(1680年)の古い庚申供養塔なども残されており、江戸時代から松本の庶民がここで厚い信仰を寄せていた歴史の息遣いが伝わってきます 。
少し薄暗いお堂のなかで静かに町を見守り続ける閻魔様。ぜひ現地で、その重厚なオーラと歴史のロマンを体感してみてくださいね!

安原町十王堂跡近くのおすすめスポット

万寿堂菓子舗

住所:長野県松本市旭2-3-10
地元人気高い老舗の和菓子屋

OLDIES b GOODIES

住所:長野県松本市旭1-1-20
蔵造りが素敵なカフェ

チャイニーズレストラン驪山

住所:長野県松本市桐1-2-35
独自の味で老舗中華レストラン

智海山宝栄寺

住所:長野県松本市旭1-5-13
松本城の鬼門(北東)を守る寺

餌差町にある「放光庵(ほうこうあん)」

北の安原町十王堂を後にしたら、次は東の放光庵(閻魔堂)を目指して歩きましょう。
距離にして約1.5km、時間にして25分ほどの道のりです。
放光庵は、城下の入り口を固めていた4つの十王堂のなかで、現在も十王の像が残っているんですよ!

では、行き方なんですが、萩町からの道中は細い道が入り組んでいます。
このあたりは城下町の面影が強く残っており、民家の屏や松の木など、歴史を感じる街並みです。

昔ながらの蔵をリノベーションしたカフェもあったり、さらに東側へ出ると美しく整備された女鳥羽川を下りながら歩くのもおすすめです。

安原町十王堂跡

住所: 長野県松本市大手5丁目5−31

アクセス: JR松本駅 徒歩23分 最寄りバス停 薬師神社から徒歩5分

駐車場:なし

この放光庵ですが、敷地内に入ると、2つの建物が並んでいます。
正面にあるのが地蔵菩薩を祀る「放光庵」、そして向かって右側にあるのが十王を祀る「閻魔堂」です 。

もともとこの東の十王堂は、今よりも少し西側にあったものが、後になって現在の放光庵の場所に移転してきたと言われています 。
仏教の世界では、いつも優しい「お地蔵様(地蔵菩薩)」こそが、あの厳しい「閻魔大王」の本当の姿(本地仏)だとか。
表の顔は厳しく町を守る閻魔様、裏の顔は優しく人々を救うお地蔵様。この2つが同じ場所に並んで祀られているのも、なんだか深いご縁を感じてしまいますね 。

少し薄暗いお堂の中、お堂の中をそっと覗いてみてください。ひときわ大きな閻魔大王の像が鎮座していますよ!

松本駅から約1.6km、歩いて23分ほどの道のりです。街の中心部からレトロな「なわて通り商店街」を抜けて女鳥羽川沿いへ。
美しく整えられた川の風景と、その向こうに広がる山々を眺めながら歩くゆったりとした時間は格別です。
また、豊富な水脈を持つ松本の中でも有名な「女鳥羽の泉」が近くにあり、日々お水を汲みに訪れる地元の人々の暮らしの息遣いも感じられます。

放光庵 近くのおすすめスポット

穂高酒店

住所:長野県松本市大手5-4-4
善哉酒造隣の酒店 湧水も

山山食堂

住所:長野県松本市大手5-4-25
モーニングも美味しい食堂

滿

住所:長野県松本市大手5-3-4
お蕎麦の隠れ家的名店

大寶山正行寺

住所:長野県松本市大手5-6-36
石川数正ゆかりのお寺

博労町十王堂跡(十林院)

続いて向かうのは、松本城下の南の入り口にあたる「博労町(ばくろうまち)」です!
東の放光庵を後にして、南へ向かいます。松本市のメインストリートを通るので、松本の近代的な部分を感じるルートになるかと思います。
少し遠回りをすれば、あがたの森へ寄ることもできますし、松本市美術館で草間彌生の大きなオブジェに圧倒されるのもおすすめです。
街中なので、カフェや行列のできるクレープもありますので、食べ歩きも楽しめるかと思います。

十王堂跡(十林院)

住所: 長野県松本市本庄1丁目12−14

アクセス: JR松本駅から徒歩 約13分

駐車場:なし

現在ここに十王堂の建物は残っておりませんが、
寛永20年(1643年)という江戸時代初期の年号が刻まれた一対の「六地蔵石幢(ろくじぞうせきどう)」が、今も立派に残されています。
ほかにも、聖観音や如意輪観音、お地蔵様など、古い時代に作られた石造物が静かに佇んでいます。

歴史の記録を紐解くと、ここには天正19年(1591年)に建てられた、とても大きなお堂があったそうです。
1591年といえば、あの石川数正が松本に入ってきた翌年!
まさに松本の町づくりが本格的にスタートした、エネルギーにあふれる時代から、この南のセキュリティゲートは存在していたんですね。

南の十王堂跡(十林院)からすぐ南を流れるのは、松本市民に親しまれている「薄川(すすきがわ)」です。
ここは1996年放映のドラマ『白線流し』や漫画『orange』の舞台としても知られ、今も多くのファンが訪れる聖地巡礼スポット。
橋の上から眺める川と空の「抜け感」は、フォトスポットとしても最高です!
駅からも徒歩圏内で、シュークリームの名店「マサムラ」や人気のどら焼き店もすぐ近く。歴史の余韻に浸りながら、甘いもの探索も楽しめますよ。

マサムラ

住所:長野県松本市深志2-5-24
地元で超有名な洋菓子屋

御菓子司 花柳

住所:長野県松本市深志3-7-49
種類豊富などら焼きが人気

焼肉 牡丹園

住所:長野県松本市本庄1-14-10
地元TVで取り上げられる焼肉店

緑橋

住所:長野県松本市深志2-4
小笠原忠政ゆかりの橋

歴史と自然、人の温もりに触れる松本散歩の提案です。

見えない歴史を想像して楽しむことができるお散歩コースはいかがでしたか?
松本の町を歩いていてふと立ち止まると、どこまでも高く澄み渡る空と、町を包み込むような雄大な山々。
そして、キラキラと光る川の綺麗な水面が目に飛び込んできます。

この町の魅力は、なんといってもその美しい自然と、街並みの素晴らしいバランスです。
地元民の私でも、毎日の景色ではありますが、自転車に乗ったり、歩いたり、車を運転していても、今日の風景も綺麗だなと思ってしまいます。

昔の人々が祈りを捧げた十王堂や石仏といった「懐かしい歴史の風景」のすぐそばに、明治・大正・昭和と続くレトロな近代建築や、ハイセンスな新しいお店がごく自然に融合しています。
そして何より、歩いていて心があったかくなるのは、松本の人たちの飾らない優しさです。ふらっと立ち寄ったお店での気さくな会話や、街を包む穏やかな空気が、お散歩の疲れをスッと癒やしてくれます。

今度の休日はぜひスニーカーを履いて、心地よい風を感じながら、爽やかなお散歩を楽しんでくださいね!

[参考資料および引用元]
鎌倉十三仏詣(古都鎌倉十三仏霊場巡拝)鎌倉十三仏詣りとは
国京都国立博物館/国宝虚空蔵菩薩像とその信仰背景(下) / 泉武夫
松本旅のしらべ/餌差町十王堂の諸仏
松本旅のしらべ/安原十王堂跡
城下町探索20/2009/8/13/十王道・地蔵堂


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